全日本トライアスロン皆生大会レポート
 岡山県トライアスロン協会 武智一幸

2003.7.20 6:30現在天候:雨、気温:21℃、湿度:89%、風向:西、風速: 1m、潮流:東から西0.5m〜1.0m

 今回の報告は、私の幾つもあったであろう失敗例を2点に集中し、その 2点を掘り下げながら報告したい。また、皆様からのご意見や批評を参考に今後に繋げたいと思います。

【30分遅れの開催について】
 7月20日、雨は午前3時頃から雷を伴う、激しい雷雨となった。夜の明けていない皆生の街が、不規則に昼間の様に明るくなる。この雷雨はいつまで続くのだろう、TVのスイッチを入れてもまだ気象情報は流れていない。募る不安、早く情報が欲しい。と思いながら、宿を後に会場へ向かう。

前日の土曜日には、同日開催が予定されていた、徳島県のひわさ大会が、金曜日の記録的な集中豪雨で、開催の順延が決定されていた。また、九州北部でも床上浸水など、大きな被害が出ていた。それでも選手は皆生に集まってくれている。3000名のスタッフ、備品、TVの生中継、大会開催の準備は整っている。

 今年の皆生大会をどういったカタチにするのか、何をすれば良いのか。時折、目の眩む閃光を放つ空を恨めしく眺めるしか無かった。トライアスロンは自然との戦いでもある事を改めて感じる。

 午前4時、スイム会場へ到着した。数名のスタッフが激しい雨の中、目の前の海に、天と地を結ぶ閃光を呆然と眺めている。「今日のスイムは無しだろう。」言葉にしなくても、伝わってくる。この時点で、スイム中止の公算は高い。急いでスイム部長に連絡を入れ、状況を確認する。

 昨年より、スイムの可否決定に、実行委員長及び、競技委員長にスイム本部テントまでご足労願い、最終決定を行い始めた。今年もここで最終決定を行う予定である、話し合える場を作っていて良かった。

 しばらくして、実行委員長・競技委員長・スイム部長・技術代表と私がスイム本部テントに揃った。この時点で、米子測候所の発表では、鳥取県全域に雷注意報が発令されていた。

 海上への落雷があるため、スイムのコースロープは、未だ設置されていない。1stランを含めた話し合いが始まった、この雷が何時まで続くのか、スタッフの待機状況、コースロープを設置に掛かる所要時間、先程中山委員長からアドバイスを頂いた選手及び海上スタッフの安全性など、午前5時には決定しなければならない。残された時間は、あまりにも少ない。

 警報が出ていないこの状況で、雨はいたしかないとしても、落雷だけが気がかりである。午前5時、スイム可否決定の時刻、以下の状況が揃った。鳥取県全域に出ていた雷注意報が、鳥取県中西部地区の大雨洪水注意報になり、皆生地区上空を覆っていた雷雲は、その範囲が非常に限定されていた事。他地区では雨もまばらである事。米子測候所の調べでは、皆生上空の雷雲は1時間程度で東に抜ける。肉眼でも雷雲の位置は明らかに、また急速に東に遠ざかっていた。地元の漁師の方の見解では、現在の雷雲は皆生上空から抜け去りコースロープの設置も可能。

 その頃には空も白み始め、波高は確認できなほどのなぎ状態で、スタート位置となる日野川河口にも競技を行うために支障のある程度の雨水の流れ込みは無い。潮流もそのスピードは速くない。落雷も峠を越え、回数も激減していた。午前7時の競技スタート時刻まで、2時間ある。西の空は先程までの真っ黒い雷雲とは確実に異なる、好転しているのは、誰もが理解できる。スタッフもスタンバイ出来ている。

 スイムコースの距離を短縮する、コースを周回にするなど意見はあったものの、以上を考慮し、通常開催でのGOが出た。スイムコースのコースロープをフルコース設置するまでの所要時間は、1時間30分。午前7時のスタート時刻とコースロープ設置完了時刻と同時刻になる可能性もある。途中トラブルがあれば、間に合わない。また、雷雲の通過まで、少しでも時間を稼ぎたかった。念の為スタート時刻を30分遅らせることに了承が貰えた。

 ここで、科学的根拠はあまりにも乏しかった。地元の経験と予測が大きく働いての事だった。本当に良かったか、何か足りないのではないか。後ろ髪を引かれる思いを残しつつ開催へ向けて段取りが一斉に始まる。ボランティアの配置、タイム制限の関門、TVの中継、道路使用など全てが30分遅れの開催となる。

 早くもここで、失敗した件がある。誰もが目にした落雷に、恐怖感を抱く選手も少なくないはずである、いくら地元の経験に頼るものとしても、スイム競技中に落雷の可能性を科学的にゼロとは言い切れないだろう。今回スイムに恐怖感がある選手には、バイクからスタートする事を勧めれば良かった。全くの配慮不足だった。

 事実、スタート5分前に、選手の整列する正面の海上に、最後の落雷があった。海上は遮るものは何も無く、かなり遠くの物もはっきりと確認できた。この時点で2名のDNSが出てしまった。自分の配慮不足が見事に晒 された瞬間だった。スイムは出来るものと思い込んでいた自分に気づく。

 この時あと10分、いや5分だけでも様子を見るために、スタートを遅らせる事が出来なかったか。動き出した巨大な生き物を1人では止めることが出来なかった。後悔は先に立たないのものだ。自分の経験不足と誤った判断は、大会終了まで自分を捕らえて放さなかった。

 状況は異なれど、落雷のある場合の対応。この件について今回は、非常に考えさせられた。今回の私の場合は悪い例として、科学的裏付けの出来る確認方法はどうすればよいのか、どういったシステムを使えば良いのかと言う事です。現在では、ネット上でかなり詳細な落雷情報を知る事が出来る。限られた時間と状況の中で、リアルタイムに情報を得て、公開することによって、多くの方と考えを共有し納得出来るのがベストでしょう。

 また、どこに主眼を置くのか間違ってはならないことです。多数の意見ばかりでなく、少数の意見をどう尊重できるか、配慮できるかと言った事でしょう。その後、落雷は1度も無く、スイム競技が雨の降りしきる中、通常通り終了した事を付け加えておきます。

【バイク・ランコースの応援】
 皆生大会は、開催趣旨・開催状況からコースの交通規制が、他大会とは異なります。応援者がコース内を移動できるのも事実です。そのため、応援する車がバイクコースで、選手と併走やボトルを渡すなどと言った、自転車競技さながらの場面が、過去の大会でしばしば見受けられていました。しかし、ここ最近は応援者の意識も向上しつつあるので、こういった光景を目にする事は少なくなりました。しかしながら、コース内に地元の一般車両や応援者の車が行き交う事に規制出来ないのも確かです。

 ここで考えたいのが、周辺地域の方の生活する中でこの大会は開催されている事からも、地元の方の車両に対しては規制できないものの、我々や応援する方の大会への配慮だと思います。皆生大会では、応援者の方へバイクコースやランコースへの応援バスを用意しています。 これは、以前に応援する方が、車でバイクコースへ入っていて、選手と接触する事故が有ったため、なるべくコース内の車両を減らすために主催者側が用意しているのです。ところが、応援する対象選手を限定するものではないため、自家用車でのコース内移動は少なくありません。

 違法駐車などは無いものの、選手の直前を右折するケースや、左折の巻き込み、また下りでのスピードは自転車の方が速い場合が有るのは、競技をされている方には理解していただける所でしょう。コース内を走る場合は、熟練した運転技術が必要なのです。地域の方へそれを要求するものではなく、この場合は選手の状況判断に頼るものだが、選手を応援する自家用車の方が、他選手との事故や走行の迷惑になるような行為は、非常に悲しいものでしょう。

 一部の行為のために、全てが規制される状況は、あまりにも落胆的過ぎるかもしれません。また、家族の声、仲間の声の応援は、選手にとってプラスになるでしょう。ではどうすれば良いのでしょう。思い当たるのは、定点での応援やコースを迂回しての移動だと思います。なるべくコースは選手と地元の方が走りやすいコース状況を 応援する方に提供して欲しいと言うものです。

 皆生大会では、スムーズな運営は応援者の方の協力も必要なのです。 出場選手はこの事を応援してくださる方へ説明し、理解と協力を得られるようお願いしたいと思います。

 また、大会を続けるにあたり、トライアスロンは地域に何が出来るかという事を考えたいと思います。折角選手の間近で応援できるのであるならば、選手の落としていった、ゴミなど一つずつ拾っても、個人では大した量にはなりませんが、みんながそう言った行動を起こすと、皆生大会のバイクコースやランコースは、開催前よりもきれいな状況が見られるでしょう。汚して帰るのではなく、きれいにして帰る気持ちは、大会を支える大きな力になるのでないでしょうか。一人一袋のごみを持ち帰る運動として、取り組んでみて欲しいものです。

 皆生大会だから出来る事、それを実行する事で大会を盛り上げたり、支えたり出来るように思います。選手ばかりでなく、応援する人やボランティア、スタッフが一体で大会の雰囲気を作っていければ素晴らしい事だと考えます。

 今回は、大きな問題点を2つに絞って報告させていただきました。その他の細かい改善点は、今後所轄の競技団体と詰めて参りたいと思います。ご質問等があれば、お問い合わせいただけます様、お願いします。以前にも述べましたが、皆生大会は第1回大会からの雰囲気を継承しつつ、今日まで受け継がれて来ました。それ故に、開催の趣旨や選手に対する思い入れは、新規大会には無いものを感じます。

 現在は、他大会とよく比較対照されますが、現在のトライアスロンを取り巻く状況の中で、最低限の事を守りつつ、制約される部分よりここでしか出来ない事を十分発揮し、「ならでは」の部分を大切にしていきたいと思います。

 今大会も、多くの参加許可が貰えなかった選手がいらっしゃいました。また、出場を目標にされて日々トレーニングされている選手もたくさんいらっしゃいます。選手の方から支持されるのも、地元の方々のご尽力の賜物だと思います。

 我々が主張しなければならない事と大会を尊重しなければならない事。ともに時代にあった形で融和しながら、皆生大会を継承して行きたいと思います。それが、皆生発となる事を期待しつつ、今回の報告とさせていただきます。

=以上=
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